韓国政府は2025年6月1日より非営利団体が仮想通貨(暗号資産)を保有して現金化できるようにする新たな規制を施行する。この動きは従来の厳格な禁止措置から大きく舵を切るもので、同国の仮想通貨政策の柔軟化と制度化の一環として注目されている。これにより寄付者がビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を通じて非営利団体に貢献できるようになるだけでなく、関連銘柄価格の上昇も期待される(関連銘柄を含む仮想通貨の上場予定一覧はこちら)。ただ、その一方で透明性と安全性を確保するための厳格な制約も伴うことになる。
長期保有は認めず即時換金が義務
これまで韓国では非営利団体が仮想資産を保有することが実質的に不可能であり、たとえ仮想通貨で寄付を受けたとしてもそれを現金化することが法律上認められていなかった。韓国の金融サービス委員会(FSC)はこれを改め、非営利法人が一定の条件を満たすことで仮想資産を受け取ってすぐに現金化することを許可する方針を発表した。ただし自由な保有や投資を認めるものではなく、あくまで短期間での換金を前提とした利用に限定される。仮想通貨を受け取った団体はそれを即時に売却して現金化することが義務付けられている。これは、ボラティリティの高い資産を長期保有させることで生じるリスクを避けるための措置とされている。
対象となる仮想通貨は限定
新たに合法化される寄付対象の仮想資産についても制限が設けられている。例えば、韓国内で韓国ウォン建てでの取引が可能な主要取引所少なくとも三カ所以上で流動性を持って取引されている仮想通貨に限定される。マイナーなアルトコインやボラティリティの極端に高いミームコインのような資産は認められていない。これによって詐欺的なトークンや価値の不安定な仮想資産によって非営利団体が不利益を被るリスクを避ける狙いがあるとされている。
利用には厳格な審査と要件が課される
非営利団体がこの制度を利用するためには厳格な基準を満たす必要がある。団体としての設立から5年以上の活動実績を有し、外部監査を定期的に受けていることが条件となる。また、仮想通貨の受け入れや換金に関する方針を決定する内部委員会の設置が求められ、その運用方針も金融当局に報告される。これらの要件を満たさなければ仮想資産の寄付を受けることはできない。
新たな資金調達手段としての期待
今回の制度改革は非営利団体に新たな資金調達の手段を提供する可能性を秘めている。特に国際的な支援者や若年層の寄付者を対象にする団体にとっては従来の銀行送金に比べて送金コストが低くスピーディーな仮想通貨を通じた寄付は魅力的な選択肢となるだろう。さらに、韓国内の仮想通貨保有者が社会貢献の一環として資産の一部を寄付に回すことが可能となることで、非営利セクター全体に新たな資金の流れが生まれると期待されている。
仮想通貨取引所にも新たな規制
今回の制度改正は非営利団体にとどまらず、仮想通貨取引所全体に対する規律の強化にも繋がっている。金融サービス委員会は仮想資産の発行体が取引所で新たな銘柄を上場させる際の要件を厳しくする方針を示しており、時価総額で上位20位以内に位置するメジャーな仮想通貨でなければ取り扱いが難しくなる。また、販売量も1日あたりの取扱計画量の10%以内に制限される見込みで、過剰な販売による価格変動の抑制が狙いだ。
透明性確保と市場健全化への取り組み
取引所による自己取引の禁止や、販売収益の用途を運営費用に限定する規定も盛り込まれている。こうしたルールは仮想通貨市場における健全性と透明性を担保し、一般投資家の信頼を維持することを目的としている。過去数年にわたり韓国国内外で相次いだ仮想通貨関連のスキャンダルや破綻、詐欺事件などを受けて、より強固な規制体制が求められていたことにも呼応している。
まとめ
韓国は2025年6月から非営利団体による仮想通貨の保有と換金を合法化する。厳格な条件のもとで寄付を受け入れ即時換金を前提とする制度が整備されると同時に、仮想通貨取引所への規制も強化される。市場の健全化と寄付文化の活性化を同時に図るこの政策は、韓国が仮想資産における国際的な規範作りに貢献することを意味していると言えるだろう。